白石晩年の書簡 13

  この節手前の事御ものがたり申し候通り故に、わづかの御用にも立ち候はぬ事、口惜しく候へども力なく候。御上着などこれなく候はむか、その位は恩賜(将軍家宣からの拝領)の物なほこれあるべく候。かならず御心おきなく仰せ下さるべく候。廉潔を立て候も事にもより、相手にもより候。よのつねの同門も兄弟(けいてい)の親(したしみ)に同じく候。いはんやただに同門と申すばかりにもこれなく、秦風(詩経国風の中)に子と同袍と申すはこの事に候。
  《中略》
 土肥生(元成)事ももとより貧困の飢えかくのごときの事、御察しなさるべく候。深見翁(玄岱)事もなにやかや消失、これまた居処にまどはれ候事に候。錦里文庫(故木下順庵宅)は存し候由承知(無事なことがわかった)、せめてもの事に存じ候。これも糀町(麹町)辺へ借宅あるべく候由に候。
 それに(そちらの水戸藩邸に)今しばらく御滞留候はヾ、なにとぞ小舟になりとも辻駕籠になりとも御乗り候て、深川一色町と御尋ね御出でなされまじく候か。一面に事を談じたき事のみに候。返す返すそこもと御引きはなれは旬日の間ご猶予のかた、まし候はむか(いいのではないか)とと存じ候。貴方に及ばず候(ご返事にはおよびません)。以上。
    正月二十六日
      
 尚々貴報下され候はヾ旧宅に下さるべく候。今までのやしき望み候人候はヾ、早々御借し〔貸し)しかるべく候。
以上。」 (前掲全集第五 382頁)

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